アップルギフトカードは前払式支払手段|資金決済法と買取への影響
買取や現金化の話を読んでいると、「前払式支払手段」という硬い言葉が出てきます。これは、アップルギフトカードの法律上の呼び名です。 アップルギフトカードを発行しているAppleは、あなたの残高を現金で払い戻すことが原則としてできません。使う予定のない残高を現金にしたい人が第三者に売ることになるのは、そのためです。買取という市場が存在している理由も、ここにあります。 このページでは、政府の法令データベース(e-Gov法令検索)にある原文を引きながら、この法律が何を定めているのかを順に見ていきます。
引用する条文は公的な法令原文(著作権の対象外)です。ただし「買取への影響」の部分は当サイトの解釈を含み、確定した法的評価ではありません。個別の判断は弁護士などの専門家にご確認ください。
アップルギフトカードは、法律上「前払式支払手段」
まず、定義から見ていきます。資金決済に関する法律(資金決済法)の第3条第1項は、前払式支払手段を次のように定めています。
証票、電子機器その他の物(略)に記載され、又は電磁的方法により記録される金額(略)に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号であって、その発行する者又は当該発行する者が指定する者から物品等を購入し(略)代価の弁済のために(略)使用することができるもの
——資金決済法 第3条第1項第1号(かっこ書きを(略)で省略。e-Gov法令検索)
言い換えると、①お金を先に払って発行され、②番号や符号で、③支払いに使えるもの、ということになります。アップルギフトカードは、これに当たります。物理的なカードでも、コードだけのeメールタイプでも、法律上の性質は同じ「前払式支払手段」です。
なぜこの法律ができたのか
前払式支払手段を買う人は、お金を先に払っています。もし発行した会社が倒れてしまうと、まだ使っていない残高は宙に浮きます。
かつては、紙やIC型の商品券だけを対象にした前払式証票規制法という古い法律がありました。その後、コードだけで成り立つサーバ型のギフト(いまのデジタルギフト)が広がったため、2010年に施行された資金決済法で、これらもまとめて規制の対象になりました。
この法律のねらいは、利用者を保護することです。発行者には、未使用残高が一定額を超える場合に、その一部を発行保証金として供託する義務などが課されています。
発行者は、原則として現金で払い戻せない
同じ資金決済法は、発行者による払戻しを原則として禁止しています。
前払式支払手段発行者は、第一項各号に掲げる場合を除き、その発行する前払式支払手段について、保有者に払戻しをしてはならない。ただし、払戻金額が少額である場合その他……内閣府令で定める場合は、この限りでない。
——資金決済法 第20条第5項(e-Gov法令検索)
つまりAppleは、あなたのギフトカード残高を現金で返すことが原則としてできません。発行を終了するときや、金額が少額の場合など、例外は限られています。アップルギフトカードは、Appleのサービスの中で使うことを前提に設計されています。
これが買取にどう影響するのか
ここから先は、上の条文をふまえた当サイトの整理です。
発行者が現金で払い戻せないため、Appleのサービスを使わない人の残高は、手元に置いたままになりやすくなります。それを現金に換えるには、法律が原則として禁じている発行者からの払戻しではなく、第三者に譲渡する方法しかありません。買取業者や個人間マーケットが存在しているのは、この構造によるものです。
ここで区別しておきたいのは、資金決済法が制限しているのは発行者による払戻しであって、保有者どうしの譲渡そのものを禁じているわけではない、と一般に整理されている点です。買取はAppleからの払戻しではなく、第三者への売却にあたります。
手元のカードをどうするか
ここまでの内容を、実際の行動に置き換えると3つになります。
- Appleに現金で返してほしいと頼んでも、原則として通りません。返金を期待して問い合わせても、時間だけがかかります。
- 使う予定のない残高は、早めに売ると決めるほうが確実です(眠らせるほど価値はただ止まる)。
- 売ること自体は正当な売却で、発行者への払戻し請求にはあたりません(売っていい理由)。
なお、クレジットカードの枠で買ったギフト券を売って現金を得る方法は、ここでいう正当な譲渡とは別の話です。クレジットカードの現金化という、規約と法律の両方にかかわる論点に触れます。
なぜ原則として禁止なのか
条文だけを読むと、禁止されているという事実で終わってしまいます。なぜそう決まっているのかは、金融庁が監督に使っている事務ガイドラインに書かれています。
払戻しを自由に認めているものは、そもそも前払式支払手段にあたりません。そうしたものを発行する会社は、前払式支払手段の発行者として届出も登録もできないことになっています。
払い戻さないというのは、発行者が決めた運用方針ではなく、この仕組みであるための条件です。Appleが「法律で定められている場合を除き、現金と交換したり払い戻したりすることはできません」と書いているのは、この枠のことを指しています。
例外は2つあります
原則の外側にある例外は、発行者が事業をやめるとき(法20条1項)と、内閣府令が定める場合(同5項)です。
発行者が事業をやめるときには、公告や、店頭とウェブでの掲示が求められます。申出期間について、ガイドラインには「法令で定める60日間は、最低限の申出期間であり、利用者が払戻しを受ける機会を確保する観点から、十分な申出期間を設定する」と書かれています。
監督の着眼点には、利用者が「常に払戻しが可能である」と誤認するおそれのある説明を行っていないか、という項目まで置かれています。いつでも返してもらえる、とは考えないでください。
法律は譲渡を禁じていないのに、規約は禁じています
ここは混乱しやすい部分です。資金決済法が制限しているのは発行者による払戻しで、保有者どうしの譲渡そのものを禁じているわけではない、と一般に整理されます。
それでも多くの発行者の規約が有償の譲渡を禁じているのは、監督する側が、発行者に対してそうした約款を作るよう求めているからです。
②転売を禁止する約款等の策定や、サービスに係る上限金額を(中略)適切かつ有効な未然防止策の検討及び実施
③一定以上の金額について繰り返し譲渡を受けている者を特定するなど、不適切な利用が疑われる取引を検知する体制の整備
④不適切な利用が疑われる取引を行っている者に対する利用停止等の対応
法律の層では禁じられていませんが、規約の層では禁じられています。法律と、規約と、実際に起きることは、それぞれ別の層として分けて見る必要があります。
・規約:発行者が有償の譲渡を禁じている(当局が約款の策定を求めている)
・実際:規約違反と判断されればアカウントが止まり、残高が使えなくなる
あなたが正規に手に入れたカードを、自分の名義で売ります。この形なら、3つのどの層にも引っかかりません。
規約と法律の切り分けについては、割引で買えるサイトの記事にまとめています。制度が30年でどう積み上がってきたのかという経過は、ギフトカードと法律の30年にあります。
前払式支払手段は「どこで使えるか」で2つに分かれる
前払式支払手段は、どこで使えるかによって、大きく2つに整理されるとされています。
| 区分 | ざっくり言うと | 制度上の位置づけ(趣旨) |
|---|---|---|
| 自家型 | 発行した会社(や、その関係する場所)でだけ使えるもの | 未使用残高が一定の基準を超えたときに、当局への届出が求められるとされています |
| 第三者型 | 発行した会社とは別の、いろいろな店で使えるもの | 使える範囲が広いぶん、あらかじめ当局の登録を受けることが求められるとされています |
利用者を守るために、何が用意されているのか
条文の細かい部分には立ち入らず、制度の趣旨としてよく挙げられるものを並べます。
- 発行保証金の供託:未使用残高が一定額を超える場合に、その一部を法務局などに預けておく仕組みがあるとされています。発行者が立ちゆかなくなったときの、利用者の”最後の受け皿”という趣旨です。
- 利用者への情報の表示:使える場所、有効期限の有無、問い合わせ先といった情報を、利用者に分かるように示すことが求められるとされています。
- 当局への報告:未使用残高の状況を定期的に報告する枠組みがあるとされています。
法律から読める、2つのこと
ここまでの条文の話を、売る側の判断に置き換えます。
この2つを合わせると、換金率の見方が決まります。 買取サイトに表示されている率は、多くの場合「ベース率+LINEクーポン(およそ+0.5〜1%)」という形で作られています。当サイトが比較で並べているのは、条件をそろえるためのベース率のほうです。 また、初回買取率と2回目以降買取率は別に設定されていることが多く、初回だけ高い場合も、2回目以降のほうが高い場合もあります。自分がどちらの立場で申し込むのかを、先に確かめてください。
混同注意:「前払式支払手段」と「先払い買取」は別の話
この2つは字面が似ているため、よく誤解されます。表で切り分けます。
| 前払式支払手段 | 先払い買取 | |
|---|---|---|
| 何を指す言葉か | ギフトカードそのものの法的な分類 | 取引の進め方を指す業界用語 |
| 「先に払う」のは誰か | カードを買う人(発行者にお金を先に払う) | 買取業者(コードを受け取る前に代金を振り込む) |
| 出てくる場面 | 資金決済法の話 | 買取サイトのサービス説明 |
つまり、前払式支払手段の「前払い」は、あなたがAppleに払ったお金のこと。 先払い買取の「先払い」は、業者があなたに払うお金のこと。向きが真逆です。
ミニ事例集:この場面、どう考える?
条文よりも、場面で覚えるほうが役に立ちます。
① Appleに「残高を返金してほしい」と問い合わせた → 発行者による払戻しは原則禁止とされている領域です。粘っても動く見込みは薄く、時間のほうが減っていきます。使う予定がないなら、売るほうに切り替えるのが早い判断です。
② 「Appleの残高を現金で払い戻します」と名乗るサービスを見つけた → 発行者以外が”払戻し”を行うことはできません。それは払戻しではなく、第三者による買い取りです。用語を正しく使えていない説明は、それ自体が注意のサインになります。
③ 「保証金を先に振り込めば、高い率で買い取る」と言われた → 前払式支払手段の制度とは無関係です。利用者が先に払う理屈がない取引なので、そこで止めてください。
④ 「先払い買取(業者が先に振り込む)」と案内された → こちらは①〜③とは別物で、業者側が代金を先に払う進め方です。制度の話ではなくサービスの設計なので、混同しないでください。
⑤ 「額面より高く買います」と書かれていた → 買い手にも現金への出口がない以上、理屈が立ちにくい表示です。条件(数量・時間帯・上限・クーポンの有無)がどこかに付いていないか、先に探してください。
⑥ 使う予定がないまま、半年ほど持っている → 供託などの仕組みは「万一のとき」の話であって、残高が増える仕組みではありません。持っているだけの期間は、ただ機会が減っていきます(眠らせるほど価値はただ止まる)。
⑦ 個人間でやり取りしたほうが高そうに見える → 出品されている価格と、実際に売れた価格は別物です。相手が見つからなければ、そのあいだ残高は動きません。仕組みの違いは個人間マーケットで整理しています。
売ると決めたあとの、確認の順番
法律の話を、そのまま手順に落とすとこうなります。
この記事に出てきた言葉の早見表
| 言葉 | この記事での意味 |
|---|---|
| 前払式支払手段 | 先にお金を払って発行され、番号などで支払いに使えるもの。ギフトカードの法的な分類 |
| 自家型/第三者型 | 発行者のところでだけ使えるか、他の店でも使えるかによる区分とされるもの |
| 発行保証金の供託 | 未使用残高が一定額を超える場合に備えとして預けておく仕組み(利用者保護の趣旨) |
| 払戻し | 発行者が保有者に現金などを返すこと。原則禁止とされている |
| 譲渡(買取・売却) | 保有者どうしで権利を移すこと。払戻しとは別の行為 |
| 先払い買取 | 業者が先に代金を振り込む、という取引の進め方を指す業界用語 |
まとめ
- アップルギフトカードの法律上の呼び名は、資金決済法の「前払式支払手段」です(第3条)。
- 発行者は、原則として残高を現金で払い戻せません(第20条第5項)。Appleの外で現金にするには、第三者に売る方法しかありません。
- 買取や個人間売買が存在しているのは、この構造によるものです。ただし買取は発行者からの払戻しではなく、第三者への譲渡にあたります。
- 供託などの利用者保護の仕組みは、万一のときのクッションです。残高が増えるわけでも、全額が保証されるわけでもありません。
- 未使用のコードには価値があるので、早めに決めるほうが確実です。一方で残高は現金ではないので、額面を超える表示は理屈を疑ってください。
- 買取サイトの表示率はベース率にLINEクーポン(およそ+0.5〜1%)を足したものが多く、初回買取率と2回目以降買取率も分かれています。申し込む前に確かめてください。
- 「前払式支払手段」と「先払い買取」は別の話です。自分が先に振り込むよう求められたら、そこで止まってください。
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