アップルギフトカードの売買は古物か|カードとeメールで違う扱い
アップルギフトカードは、物理カード(プラスチック)なら古物営業法上の「古物」にあたり、買取業者に古物商許可が必要という整理が一般的です。一方、eメールタイプ(コードのみ・現物なし)は「物品」がないため古物にあたらないという実務上の見方があります。ですから、古物商許可があるかどうかだけで買取サイトの安全性は判断できません。運営者情報・連絡先・相場・前払いの有無とあわせて、総合的に見極めるのが安全です。
「この買取サイト、古物商許可の番号が見当たらないけど大丈夫?」 そんなふうに不安になったことはありませんか。 実は、アップルギフトカードは物理カードとeメールタイプ(コードのみ)で、法律上の扱いが分かれるという見方があります。 この見方を知っておくと、「許可番号がない=あやしい」と早合点せずに、落ち着いて買取サイトを見極められるようになります。
以下は公開情報・実務上の見解にもとづく整理で、確定した最終的な法解釈ではありません。個別の判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。
物理カードと「eメールタイプ」で扱いが分かれます
- 物理カード(プラスチックのカード):商品券やチケットと同じ「金券類(チケット類)」として、古物営業法上の「古物」にあたるとされます。これを買い取る事業には、古物商許可(チケット商の区分)が必要という整理が一般的です。
- eメールタイプ(コードだけ・現物がない):コード(番号)という情報だけで、手に取れる「物品」がないため、古物営業法が対象とする「古物」には当たらないという実務上の見方があります。この見方に立つと、デジタルコードだけを買い取る事業は、古物営業法の許可を必ずしも要しないことになります。
同じ「アップルギフトカード」という名前でも、手に取れる現物があるか、コードだけかによって、古物営業法の当てはまり方が変わってきます。
物理カードとeメールタイプ、扱いの違いを一覧で
言葉だけだと分かりにくいので、違いを並べてみます。
| 見るところ | 物理カード(プラスチック) | eメールタイプ(コードのみ) |
|---|---|---|
| 手に取れる「物品」 | ある | ない(コード=情報だけ) |
| 古物営業法上の扱い | 金券類(チケット類)として「古物」にあたるとされる | 「物品」がないため対象外という実務上の見方がある |
| 買い取る事業者の古物商許可 | 必要という整理が一般的 | 必ずしも要しない、という見方がある |
| サイトへの許可番号の記載 | 掲げていることが多い | 記載がないこともある |
| 受け渡しの形 | 郵送や店頭で現物を渡す | フォームなどでコードの文字列を送る |
| 本人確認 | 求められるのが通例 | 根拠が別でも、求められることがある |
| 番号がないときの読み方 | 「なぜ無いのか」を確かめたい場面 | それだけでは不自然と言い切れない |
表を眺めると、違いが生まれている原因は「手に取れる物があるかどうか」の一点だと分かります。手に取れる物があるかどうかによって、古物商許可がいるかどうか、サイトに許可番号が載るかどうか、カードをどうやって渡すかが、それぞれ枝分かれしていきます。
掲げられている番号が実在のものかを自分で照合する手順は、古物商許可番号を自分で確認する方法にまとめています。
なお、同じ買取サイトが物理カードとeメールタイプの両方を扱っていることも珍しくありません。両方を扱っている買取サイトは、物理カードのほうに合わせて古物商許可を取っていることになります。「このサイトは何を買い取っているのか」を先に見ると、許可番号の意味が読み取りやすくなります。
なぜ「物理」と「デジタル」で分かれるのか
物理カードとeメールタイプで扱いが分かれるのは、古物営業法が「物品」を対象にした法律だからです。古物営業法 第2条第1項は、「古物」をこう定義しています。
一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み(略))若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。
——古物営業法 第2条第1項(かっこ内一部を(略)で省略。e-Gov法令検索)
この原文から、2つのことが読み取れます。
- 定義の土台になっているのは「物品」、つまり手に取れるモノです。そのうえで「商品券、乗車券、郵便切手……に類する証票その他の物」を含む、と条文に明記されています。条文が証票類を明記している以上、物理カード(金券類)は古物の対象に含まれると読めます。
- 一方、eメールタイプにあるのはコード(情報)だけで、手に取れる物品がありません。そのため、「eメールタイプはこの定義に当てはまらないので対象外だ」という実務上の見方が出てきます。
eメールタイプは対象外だというこの読み方は、条文からの推測にとどまりません。警察庁が国会答弁で、同じ趣旨を述べています。
——山下史雄 警察庁生活安全局長、2018年4月5日 参議院内閣委員会。8日後の衆議院内閣委員会(4月13日)でも、ほぼ同じ答弁が繰り返されています。
しかし、国会答弁は法解釈を確定させるものではありません。裁判所の判断とは別ですし、制度もこれから変わりえます。それでも、eメールタイプは対象外だという実務上の見方がどこから来ているのかは、この国会答弁ではっきりします。
なお、アップルギフトカード自体は、あらかじめお金をチャージして使う「前払式支払手段」としての性質を持ちます。 「古物にあたるか」と「前払式支払手段か」は別々の観点で、混同しないよう整理しておくと分かりやすいです。
そもそも古物営業法は、何のためにある法律なのか
「なぜ中古品の売買にだけ、わざわざ許可がいるのだろう」と思ったことはありませんか。古物営業法がある理由が分かると、買取サイトで本人確認を求められることの意味までつながります。
古物営業法は、盗まれた物が市場に紛れて流れてしまうのを防ぎ、被害にあった品を早く見つけて持ち主のもとに戻すことを目的とした法律だとされています。
盗む側から見ると、盗んだ物はそのまま持っていても意味がありません。お金に換えて、はじめて”成果”になります。つまり中古品の売買市場は、盗品にとっての「出口」にあたります。そこで古物営業法は、中古品の売買市場に「誰が」「いつ」「何を」持ち込んだかが分かる仕組みを置きました。
金券類が古物営業法の対象に入ったのは、1995年の改正です。1995年の国会審議では、金券類を対象に加える理由が数字とともに語られています。
——中田恒夫 警察庁生活安全局長、1995年4月11日 衆議院地方行政委員会
同じ審議では、古物営業法ができた1949年の時点では金券を扱う店そのものが無かった、という指摘も出ています。そのあとで金券を扱う市場ができて、そこが盗品の出口になったので、1995年に金券類が対象へ加えられました。いま物理カードが金券類として扱われているのは、この1995年の改正があったからです。
1995年の改正を含めて、ギフトカードが法律にどう扱われてきたかを1989年から順に並べたものを、ギフトカードと法律の30年にまとめました。「物かどうか」という境界線がどこから来ているのかが見えます。
盗品の出口に記録を残すという目的から見ると、買取サイトで身分証の提示を求められるのは、あなたが疑われているからではありません。古物営業法が、出口に記録が残るように設計されているからです。この設計を知っておくと、身分証を求められたときの「なんだか面倒だな」という気持ちが少し変わってきます。
では「古物商許可がない業者=危険」なの?
答えは「一概にそうとは言えない」です。
- 上の見方に立てば、eメールタイプ(デジタルコード)だけを扱う買取なら、古物商許可が法的に不要な場合があることになります。 =「許可番号が載っていない=即あやしい」とは限らない、ということです。
- 一方で、実際には物理カードも扱う業者や、念のため古物商許可を取得している業者も多くあります。 許可は、警察(公安委員会)の審査を経て交付されるものなので、 許可番号の明記は、「実在して審査を通った事業者」であることの手がかりの一つとして、依然として役に立ちます。
たとえば、物理カードを郵送で買い取る店は「◯◯公安委員会 第◯号」という番号を掲げていることが多いのに対して、コードだけをフォームで買い取るサイトには記載がないこともあります。コードだけを買い取るサイトに番号の記載がないからといって、そのサイトが必ずしも”あやしい”とは限りません。
古物商許可は、安全を”保証”するものでもなければ、無いから”即アウト”というものでもありません。古物商許可はあくまで判断材料の一つとして見て、次のような複数の要素とあわせて総合的に確かめるのが安全です。
- 運営会社の情報(特定商取引法にもとづく表記=会社名・所在地・連絡先)が確認できるか
- 連絡先が実在し、連絡が取れるか
- 換金率が相場から極端に外れていないか(95%が出る条件)
- 手数料や保証金の先払いを求めてこないか
くわしいチェックは安全ガイドと選び方の基準にまとめています。
それでも本人確認を求められるのはなぜ?
「古物営業法の対象外なら、本人確認もいらないのでは?」と思うかもしれません。 しかし、本人確認を求められること自体は、不自然ではありません。
古物営業法が直接の根拠でない場合でも、 マネーロンダリング(資金洗浄)対策やなりすまし防止の観点から、 本人確認を行う買取サイトがあります。 逆に、本人確認をいっさい求めない業者のほうが不自然なことがあります (本人確認を求められる理由)。
記録がいっさい残らない取引で得をするのは、誰でしょうか。少なくとも、後ろ暗いところのない売り手ではありません。「本人確認なし」「身分証不要」を売り文句のように強調しているサイトを見たときは、本人確認を省いているのが利用者の手軽さのためなのか、それとも別の理由からなのか、いちど立ち止まって考える価値があります。
拾った・出所不明のカードは、そもそも売却の対象外
ここまでは「古物にあたるか」という区分の話でしたが、それとは別に押さえておきたい前提があります。 拾ったカードや、出所を説明できないカードは、区分にかかわらず原則として売却できません。 拾ったカードは遺失物法上、持ち主に返すか、警察に届け出るべきものとされています。また、盗品や不正に手に入れられた物品が売買されるのを防ぐことこそ、古物営業法の目的です。正規の買取業者ほど、出所の分からないカードの買い取りには慎重で、断ることが通例です。
ミニ事例集:この場面、どう考える?
理屈は分かっても、実際の画面を前にすると迷うものです。よくある場面を並べてみます。
① コードだけを買い取るサイトに、許可番号の記載がない → ここまでの整理に立てば、許可番号の記載がないことだけで不自然とは言い切れません。見るべきなのは、特定商取引法にもとづく表記に会社名・所在地・連絡先がそろっているかどうかです。許可番号の空欄を探すより先に、特定商取引法にもとづく表記のページを開いてください。
② 物理カードを郵送で買い取ると書いてあるのに、番号が見当たらない → こちらは、少し立ち止まりたい場面です。物理カードは対象にあたるという整理が一般的なので、「なぜ書かれていないのか」を確かめる価値があります。とはいえ即アウトと決めつける必要はなく、許可番号がフッターや会社概要のページに載っているだけ、ということもあります。まずはサイトの中を探してみて、それでも見つからなければ慎重に進めてください。
③ 許可番号は載っているが、運営会社の住所や連絡先がぼんやりしている → 許可番号があると安心してしまいがちですが、許可番号は「審査を通った事業者が実在した」という手がかりであって、いま目の前の取引まで保証するものではありません。むしろ、運営会社の実体が見えないことのほうが重い材料です。許可番号があるからといって、そこで気を緩めないでください。
④ 「本人確認は不要、すぐ振り込みます」と手軽さを強調している → 手続きが軽いのは魅力に見えます。しかし、ひとつ前の章で書いたとおり、本人確認をしないほうが不自然なこともあります。速さと引き換えに何が省かれているのかを見てください。
⑤ 家族や友人からもらったカードを売りたい → 出所を自分の言葉で説明できるなら、ふつうの取引です。逆に、どこから来たのか説明できないカードは、区分に関係なく手を出さないのが安全です。
⑥ 「うちは許可があるので安全です」と、許可だけを前面に出してくる → 古物商許可はあくまで入口です。許可の説明と同じくらいの丁寧さで、率の条件・手数料・振込のタイミングが説明されているかを見てください。古物商許可だけが強調されていて、率や手数料の説明が薄いときは、説明されていない側に目を向けると全体が見えます。
だから、売買の判断はこう変わる
ここまで法律の話を続けてきたのは、物理カードかコードかを知っておくと、売るときの手順が変わるからです。順番にすると、こうなります。
まとめ
- アップルギフトカードは、物理カードが古物営業法の対象、eメールタイプ(コードのみ)が対象外、という見方があります。
- 扱いが分かれる理由は、古物営業法が「物品(モノ)」を対象にした法律だからです。コードだけの取引には、その定義がそのまま当てはまらないという解釈があります。
- ですから、「古物商許可がない=危険」と早合点しないでください。古物商許可は手がかりの一つで、運営者情報・連絡先・相場・前払いの有無とあわせて総合的に判断します。
- 本人確認は、記録が残る手続きです。盗品の流通を防ぐという古物営業法の目的から見ると、許可制と本人確認は同じ根から出ています。売る側にとっても、正規のルートで売った証拠になります。
- 手順は、①現物かコードかを確認 → ②許可番号は材料の一つ → ③運営者情報と前払いの有無 → ④本人確認の準備 → ⑤最後に率を比べる、という順です。この順番を逆にしないことが、いちばんの安全策です。
不要なアップルギフトカードを安全に売る手順は安全ガイドで、 実際の換金率は各サイトのベース率比較で確認できます。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談ではありません。「古物」への当てはめは実務上の見解を含み、確定した法解釈ではない部分があります。