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ギフトカードと法律の30年|買取をめぐるルールは、どう変わってきたか

公開:2026/8/8 / 著者:ギフトカード総研編集部かりん

アップルギフトカードやAmazonギフト券は、ここ数年で急に広まったように見えます。しかし、こうしたギフトカードをめぐるルールは、1989年から少しずつ形になってきました。

このページに書いてあるのは、これまでの経過の記録です。手元にある1枚をどう扱えばよいのかという判断については、アップルギフトカードの法的な正体は「前払式支払手段」にまとめています。

🔰 ギフトカードの買取って、法律のグレーゾーンなんじゃないんですか?
🍎 「グレー」とひとまとめに言われることが多いのですが、実際には、線が引かれているところと、引かれていないところがあります。どこに線が引かれているのかを、順番に見ていきましょう。

年表

何が起きたか
1989発行する側に未使用残高の保全が義務づけられる(2分の1以上
1995金券類が古物営業法の対象に加えられる
2002ネットオークションに規制が入る(盗品の出口対策)
2016カード会社の監視の中身が国会で説明される
2017「ショッピング枠の現金化」の定義が国会で示される
2018電子ギフト券は物品ではないので古物ではない」(警察庁)
2022前払式支払手段の発行者に本人確認義務が入る
2023金融庁が発行者に転売を禁止する約款の策定などを求める(監督の指針)
平成30〜令和5アカウント停止をめぐる判決が積み重なる(9件前後・利用者勝訴なし
2026遺品整理・実家じまいの買取が消費者問題として審議される

1989年:供託制度の導入

1989年に成立した前払式証票の規制等に関する法律(いわゆるプリペイドカード法)で、発行保証金の供託が導入されました。この制度の目的について、大蔵省の銀行局長は国会で次のように説明しています。

1989年12月14日 参議院大蔵委員会「この法律は購入者の利益を保護する、すなわち消費者の保護を信用秩序の維持とあわせて根本的な目的としているものでございます」
「カードの所有者の権利を保全するための措置として、未使用残高の二分の一に係る金額以上の額を供託し、あるいは銀行等の保証を取りつけるというふうにしております」
「これは商品券取締法における二分の一というルールを基本的には承継したもの」
——土田正顕 大蔵省銀行局長

これは、発行した会社が倒れたときに、カードを買った人の手元に何も残らなくなってしまうのを防ぐための仕組みです。この2分の1という割合は、それ以前にあった商品券取締法から引き継がれました。当時の審議では「第三者発行型は最低75%に引き上げるべきだ」という要望も出ていますが、引き上げられていません。

この仕組みは、現在も続いています。いまの資金決済法の第14条には、次のように書かれています。

前払式支払手段発行者は、基準日未使用残高が政令で定める額(中略)を超えるときは、当該基準日未使用残高の二分の一の額(中略)以上の額に相当する額の発行保証金を(中略)供託しなければならない

基準日は毎年3月31日と9月30日で、基準額は1,000万円です。

誤解しやすいので、3つ補足します「発行額の半分」ではありません。対象は基準日時点でまだ使われていない残高で、その2分の1以上です。使われた分は入りません
現金を積むとは限りません。銀行等との保証契約や、信託会社との信託契約で代えることが認められていて(資金決済法15条・16条)、その分は供託しなくてよいことになっています
対象は、日本で前払式支払手段の発行者として届出・登録をした事業者です。どの発行者がどの方法で、いくら保全しているかは、個別に確認する必要があります
保全されるのは未使用残高の半分以上までです保全されているのは未使用残高の「2分の1以上」で、全額ではありません。
つまり、ギフトカードの残高は、現金を銀行に預けているのとは違うということです。使わずに置いておく期間が長いほど、そのぶん預けたままになります。使うか、売るかを早めに決めたほうがいい理由の一つが、ここにあります。

1995年:法改正で、商品券・乗車券・郵便切手などの金券類が古物営業法の対象に

古物営業法ができたのは1949年(昭和24年)です。この法律ができた当時、金券を専門に扱う店はありませんでした。

改正の根拠になった数字1994年に金券類が盗難などの被害に遭った件数は、全国で年間およそ35,000件。検挙した被疑者を追及した結果、盗んだ金券類を第三者に処分していたものが約3,700件あり、そのうち9割以上にあたる約3,200件で、処分先はチケット商でした。この件数は5年前と比べておよそ3倍に増えています。
——中田恒夫 警察庁生活安全局長、1995年4月11日 衆議院地方行政委員会

先に金券を扱う市場ができて、そこが盗品の出口になったので、あとから法律の対象に加えられました。

このとき想定された「これらに類する証票その他の物」には、オレンジカード、航空券、遊園地の入場券、テレホンカード、収入印紙などが挙げられています。いずれも紙かプラスチックでできた、手に取れる物です。

2002年:法改正で、インターネットオークションに規制が入る

当時の推計2000年1月から2002年9月までの2年9か月で、ネットオークション上で処分された盗品等は8,723件・3億5,316万円と推計され、その約半数が少年によるものとされています。
——2002年11月8日 衆議院内閣委員会

この審議では、盗品を買った側に何が起きるのかについても説明されています。

盗品を買い受けた場合は、民法の規定によりまして、盗難発生から二年間は被害者からの請求に応じて返還をしなければいけない ——瀬川勝久 警察庁生活安全局長

同じ日の討論では「盗品と知らず買い付けた場合におきましても」と、知らずに買った場合を含めて述べられています。ただし、この民法の規定は「占有」、つまり手元に物があることを前提としています。番号だけをやり取りするコードの取引に、この規定がそのまま及ぶのかどうかは、別の問題です。

2018年:「電子ギフト券は、物品ではない」

2018年4月、国会で次のような質問が出ました。電子ギフト券は物ではないとみなされるため古物営業法の対象にならず、専門の買取サイトも存在している、被害は2016年だけで1,000件を超えて7億8,000万円にのぼる、これにどう対応するのか、という内容です。

これに対して、警察庁は次のように答えています。

2018年4月5日 参議院内閣委員会「お尋ねの電子ギフト券につきましては、物品ではないことから、古物営業法上の古物には該当しないところでございます」
あわせて「電子ギフト券をだまし取る詐欺事件が近年増加傾向にあり、警察としても、電子ギフト券が犯罪に利用されるものとして、各種対策を推進している」とも述べています。
——山下史雄 警察庁生活安全局長(8日後の衆議院内閣委員会でも、ほぼ同じ答弁)

1995年に古物営業法へ加えられたのは、「物」としての金券でした。番号だけで成り立つコードは、その枠から外れています。1995年に引かれたこの線が、いまもそのまま境界線として残っています。

ただし、国会答弁は法解釈を確定させるものではありません。裁判所の判断とは別のものですし、制度そのものが変わることもあります。この点については、アップルギフトカードの売買は「古物」にあたる?でくわしく整理しています。

2022年:法改正で、前払式支払手段の発行者に本人確認義務

2022年5月13日 衆議院財務金融委員会相手方に番号等を通知することにより価値を移転できる電子ギフト券のほか(中略)中には、高額なチャージや高額な価値の移転ができるサービスも提供されております」
「前払い式支払い手段のサービスについては、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認義務がないということから、反社会的勢力の人が前払い式支払い手段のサービスを利用している事例がございます。マネロン対策上の限界があるということも指摘をされている」
——鈴木俊一 財務大臣(金融担当)

番号を伝えるだけで価値が移るという、ギフトカードの性質そのものが、対策すべき課題として名指しされています。

ここで注意が必要です。2022年の改正で本人確認の義務を負うことになったのは、ギフトカードを発行する側です。買取サイトが申込みのときに行う本人確認は、これとは別の根拠にもとづくものです(本人確認が不安な人へ)。

2023年:金融庁が、発行者に「転売を禁止する約款」を求める

これは法律ではなく、監督のための指針です。金融庁の事務ガイドライン(第三分冊5 前払式支払手段発行者関係)の「不適切利用防止措置」には、発行者がどのような対応を取っているかを確認するための項目が並んでいます。

事務ガイドライン Ⅱ-2-6-1(抜粋)転売を禁止する約款等の策定や、サービスに係る上限金額を不適切な利用が抑止できると考えられる水準に設定するなど、適切かつ有効な未然防止策の検討及び実施
③一定以上の金額について繰り返し譲渡を受けている者を特定するなど、不適切な利用が疑われる取引を検知する体制の整備
④不適切な利用が疑われる取引を行っている者に対する利用停止等の対応及び原因取引の主体や内容等についての必要な確認の実施

ギフトカードの規約で転売が禁じられているのは、発行者が独自に決めたことではありません。監督する側が、そうした約款を策定しているかどうかを確認しています。アカウントの停止についても、不適切な利用を検知して止める体制を整えているか、という項目に含まれています。

裁判所が「譲渡禁止規定には十分な合理性がある」「停止は裁量の範囲内である」と繰り返し判断してきたことも、この監督の方向と同じ向きを指しています。

同じガイドラインには、詐欺の被害についての項目もあります。

事務ガイドライン Ⅱ-2-5-1(抜粋)①被害者からの申出等(捜査当局、消費生活センター等からの情報提供を含む)、詐欺被害に関する情報を速やかに受け付ける体制を整備するとともに、こうした情報等を活用して、詐取された前払式支払手段を特定し、利用停止の措置を迅速かつ適切に講ずる態勢を整備しているか
②利用停止を行った前払式支払手段について未使用の残高がある場合には、被害者の財産的被害を迅速に回復するため、返金手続等について社内規則で定めることなどにより、円滑かつ速やかに処理するための態勢を整備しているか

同じ節の冒頭には、前払式支払手段の性質について、次のように書かれています。「販売店において匿名で誰でも簡単に購入して利用でき、他人に譲渡することもできるものがあり」。

同じ年、こういう意見も出ています金融庁が公表したパブリックコメントの回答(2023年5月26日)には、事業者団体からこんな意見が載っています。
「ギフトカードやギフトコードの不適切な流通防止の観点から、それらの買取業者や転売業者、転売サイト等への対策の内容を早急に明らかにするとともに、当該対策を確実に推進し(中略)実施状況を定期的に公表いただきたい」
「マネー・ローンダリング防止の観点からは、アカウントにチャージされる段階ではなく、番号等のままで発行者の管理する仕組みの外で売買がなされる段階に着目して対策を取ることが喫緊の課題であるところ、今般の法令改正ではその点の手当てがなされておらず
これに対する金融庁の回答は、「貴重なご意見として承ります。」でした。2018年に国会で指摘された空白は、この時点でも埋まっていません。
※これは意見を出した側の主張であって、金融庁の見解ではありません。

平成30〜令和5年:アカウント停止をめぐる裁判

アカウントが停止され、そこに登録していた残高が使えなくなった、という紛争です。利用者が発行者に対して、残高の返還や損害賠償を求める形で、くり返し起きています。

早稲田大学の白石大教授は、2022年2月の時点で少なくとも6件の東京地裁判決があるとして、「ひとつの紛争類型を形成しつつある」と整理しています。研究会がまとめた《概観》には、次のように書かれています。

これまで現れた裁判例においては、いずれも利用者が敗訴していたが、今期の3例においても、同様の傾向が続いている

公表されているものを数えると、平成30年から令和5年までで9件前後になります。このうち、利用者側が勝った例は見当たりません。

判決9件の一覧

判決求めたこと結論判断の要点
平30.3.9未使用残高相当額の返還(不当利得)棄却登録しても権利が付与されたとは認められない/譲渡元までの取引経過が不明で承継を立証できていない
令2.11.5利用契約上の地位の確認/損害賠償棄却正規販売店以外からの購入は、不正取得品が含まれるかにかかわらず譲渡禁止規定違反/知らずに取得しても閉鎖できる
令3.1.21未使用残高の権利があることの確認棄却登録で権利が確定的に帰属したとはいえない/承継取得の立証なし/有償譲渡禁止に違反しており無効化に違法な点なし
令3.3.30アカウント停止の解除/慰謝料/損害賠償棄却現金化を目的とする違法な活動に使われている可能性があると判断してのログイン停止は違法とはいえない
令3.4.21未使用残高相当額の損害賠償棄却購入数量制限違反に対して2度警告したうえでの閉鎖で、不当な点はない/結果として使えなくなっても不法行為にならない
令3.6.17未使用残高の有効化棄却番号を知っているだけで正当な権利者と推定される、という主張は理由がない/無償譲渡を受けたとも認められない
令3.10.6損害賠償ないし不当利得返還棄却同様の理由づけによる
令4.9.13売上金の支払い(マーケットプレイス)棄却違法行為による売上金の支払留保を定めた規定は公序良俗に反しない/取引は現金化目的の疑い
令5.8.15購入済みギフト券相当額の返還棄却商用目的での使用の禁止は利用者の利益を一方的に害するとはいえず、事前の通告なき閉鎖も権利濫用にあたらない

9件はすべて棄却されています。そして、敗訴の理由は毎回ほぼ同じところに集まっています。そのギフト券がどこから来たものなのかを、買った側が証明できない、という点です。

この表の作り方について判決文そのものは有償のデータベースにしかありません。ここに並べたのは、研究会が公表している別表と《概観》の要約から組み直したものです。原典を確認できたのは平30.3.9と令2.11.5の2件で、残りは要約にもとづきます。細部の言い回しは原文と異なります。

判決のなかには、この分野の性質をはっきり示したものがあります。

番号を持っていることは、権利者であることではない「ギフト券の番号を知っているだけで正当な権利者と推定される」という主張に対し、判決は理由がないとしました(東京地判 令和3年6月17日)。
ギフト券は有償の譲渡が禁止されており、金銭や有価証券のような高度の流通性が予定されていない。だから残高の表示に公信力はない、という説明がされています。

くわしい経緯と、なぜ買った側がほとんど勝てないのかという理由は、割引で買えるサイトの記事の後半にまとめています。

2026年:「買わせる」から「売らせる」へ

いちばん新しい動きは、ギフトカードそのものではなく、物を手放す場面から出てきました。

2026年6月16日 衆議院消費者問題に関する特別委員会「消費者行政は、これまでは(中略)買わせる被害を防ぐことを中心に発展してきた(中略)しかし、今、被害の現場は変わってきています。売らせる、処分させる、整理させる、高齢者が物を手放す場面にこそ、新たな消費者被害の温床が起こっています」
——井戸まさえ議員

貴金属の買取、不用品回収、遺品整理といった、物を手放す場面が、消費者問題として名指しされています。ギフトカードも、遺品や整理品の中から出てくることがあります

同時期のほかの動き

年表の本筋からは外れますが、同じ時期に記録が残っているものを2つ挙げます。

2016年には、カード会社の監視について説明が行われています。経済産業省の審議官が、カード発行会社は24時間体制で利用状況を監視しており、「短時間のうちに高額商品や換金性の高い商品の大量購入」があった場合には、利用の承諾を保留したり、確認の連絡をしたりする、と述べています(なぜバレるのか)。

2017年には、「現金化」の定義が国会で示されています。金融庁の監督局長が、ショッピング枠の現金化とは「価値のない商品を購入させ、その代金の一部を払い戻す」か、「換金性の高い商品を購入させ、買い取る」行為だと説明しました。そのうえで、これが貸金業法上の貸付にあたるかどうかは「一概には申し上げられません」としています(買取と現金化の違い)。

ギフトカード買取サイト年表

買取サイトの開設時期(一部)。

社数サイト
20031買取バイカ
20132Appliru/金券買取EX
20144アマテラ/エアギフト/ギフトチェンジ買取本舗
20152アマプライム/ソクフリ
20161買取ボブ
20171ウリチケ
20182買取デラックス/買取マッハ
20214ナナギフト/買取タイガー/買取マンボウ/買取ヤイバ
20228ギフトアニマル/ギフトジェシー/買取カリビアン/買取クッキー/買取ダー/買取レオン/買取将軍/買取戦隊高額レンジャー
202313サカナ倶楽部/バイソク/買取カッパくん/買取ダッシュ/買取ダン/買取ビッグチャンス/買取ホームラン/買取モア/買取ライオン/買取ルビー/買取大和/買取高額箱/超買取キッド
202411ドクター買取/二次元買取/漢気買取/買取おーきに/買取らぼらとり/買取ガレージ/買取スクエア買取ベイビー/買取七福神/買取漫才/買取笑店
20255いちえもん/ソクマネ/買取きゃべつ/買取スイート買取スカイハイ

リンクが付いているのは、当サイトが換金率を記録している9サイトです。リンクをクリックすると、そのサイトの今日の数字と、これまでの推移が見られます。リンクが付いているかどうかは、評価とは関係ありません。

開設時期は、各サイトのドメインが取得された日と、Web上の記録(インターネットアーカイブ)に最初に現れた時期の、早いほうを目安にしています。サイト自身が公表しているものではありません。実際、9サイトの掲載内容を調べた範囲では、開設年や創業年に触れているところはありませんでした。そのため、実際の営業開始がこれより古い場合があります。別のドメインで先に営業していた、途中で名前やドメインを変えた、といったケースは追えません。年は「目安」として読んでください。ここに並べているのは開設時期の記録であって、各社の評価ではありません。

この年表と、法律の年表を重ねると、同じ時期に3つのことが起きています。2018年4月には、国会で「電子ギフト券は古物にあたらない」「仲介サイトの所管も決まっていない」「売買を規制する法律もない」と指摘されました。2021年からは、買取サイトの開設が4社、8社、13社、11社と続いています。そして平成30年(2018年)からは、アカウント停止をめぐる裁判が積み上がりはじめました。

2013年から2018年までの6年間で確認できたのは11件でした。2021年から2024年までの4年間では、36件になっています。

30年の整理

1
中古品の買取とその周辺の法律は、この30年において、市場ができたあとに追いかけてくるようにでき上がってきました。1995年や2002年にも、それぞれの出来事をきっかけに規制が入っています。現在、アップルギフトカードの買取市場において、いまだ規制が入らずにいるのは、これら中古品の買取市場からみるに、まだ規制の入る前の段階にいるからかもしれません。
2
「物か物ではないか」が、いまも境界線になっています。1949年に法律ができた際の前提が「物品」という枠でした。この線引きは、2018年の国会答弁にもそのまま出てきます。これが、物理カードとコードで扱いが分かれる理由です。
3
規制は一貫して、発行する側に向いてきました。1989年の供託も、2022年の本人確認も、規制の対象は発行者です。売り買いする側を正面から規律する法律は、いまのところ見当たりません。しかし、それは「守られている」という意味でもありません。法律で制定されている供託は、発行者が倒れたときの備えであって、あなたの取引を守るものではないからです。
「規制がない=何をしてもいい」ではありませんこの年表から分かるのは、ギフトカードの売買そのものを禁じる法律が無いということであって、何も起きないということではありません。実際に起きているのは、発行者の規約にもとづくアカウントの停止と、残高が使えなくなることです。それを争った裁判では、利用者が敗れ続けています。
法律の話と、事業者の規約の話と、実際に起きることは、それぞれ分けて見てください。

保全の範囲

「換金できない」のは、定義に組み込まれています

はじめに、前払式支払手段の範囲がどこまでかを確認します。金融庁の事務ガイドラインには、次のようにあります。

事務ガイドライン Ⅰ-1-1⑵(証票等や番号のうち)法第20条第1項又は第5項に規定する場合を超えて払戻し(換金や現金の引き出し)を自由に認めているものについては、前払式支払手段と性格を異にするため、このようなものを発行する者が前払式支払手段発行者として届出や登録を行うことはできないことに留意する必要がある

払戻しを自由に認めているものは、そもそも前払式支払手段の枠から外れます。ギフトカードの残高が原則として現金に戻らないのは、発行する会社の都合によるものではなく、制度がそのように設計されているからです。

例外は2つあります。発行者が事業をやめるとき(法20条1項)と、内閣府令が定める場合(同5項)です。事業をやめるときには公告や掲示が求められ、申出期間については「法令で定める60日間は、最低限の申出期間」とされています。

監督の着眼点には、次のような項目もあります。利用者が「常に払戻しが可能である」と誤認するおそれのある説明を行っていないか、という項目です。

どこまで守られているのか

ここまでの年表を通して見ると、守る仕組みがどこに置かれているのかが分かります。場面ごとに、ひとつの表へまとめます。

場面守る仕組みはあるか実際にどこまで届くか
発行元が倒産したある(発行保証金の供託・1989年〜)未使用残高の「2分の1以上」。全額ではありません
発行元が資金決済法の対象外だったない未使用残高が基準額(1,000万円)以下などの場合、2分の1の保全すらありません
発行元がサービスを終了したある(払戻しの手続公告・掲示が行われ、申出期間は最低60日。ただし申し出なければ受け取れません
発行元が規約違反と判断したないアカウント停止で残高が使えなくなる。争った9件はすべて棄却
コードの出所が分からないない権利の承継を買った側が立証する必要があり、事実上ほぼ不可能
番号を持っているない「番号を知っている=権利者」とは推定されない
物理カードを盗品と知らず買った民法の枠組みはあるただし盗難から2年間は返還を求められうる側でもある
買取業者が持ち逃げした古物営業法(物理カードの場合)/特定商取引法(訪問購入の場合)コードだけの取引には、古物営業法が及ばないという整理があります

守る仕組みは、発行する側(供託)と、物としての金券(古物営業法)に置かれています。番号だけで成り立つコードと、その売買については、ほとんど何も置かれていません。

手元のカードをどうするか・残高を寝かせないことです。保全されているのは未使用残高の半分で、しかもアカウント側の事情によって使えなくなることがあります。サービスが終わるときの払戻しも、期間内に自分で申し出なければ受け取れません。使うか売るかを早めに決めるほうが安全です
・出所の分からないコードを買わないことです。この場面には守る仕組みがひとつも無く、9件の判決がその結果を示しています
・自分で買ったカードか、もらったカードを、自分の名義で売ることです。この形であれば、表のどの空欄にも当てはまりません

売る前に確認すること

手元のカードを売ろうとしている人にとって、確認しておくことは3つです。

そのうえで、いくらで売れるかは日によって動きます。アップルギフトカード買取の換金率を、売る直前に見比べてください。

出典発行保証金の供託の目的と「未使用残高の二分の一」(1989年12月14日 参議院大蔵委員会・土田正顕 大蔵省銀行局長/同日の商品券取締法からの承継についての答弁)/現行の供託義務(資金決済に関する法律 第14条・e-Gov法令検索)/基準日と基準額1,000万円(財務省 関東財務局「前払式支払手段(商品券・プリペイドカード等)関係」)/転売を禁止する約款等の策定・繰り返し譲渡を受けている者の検知・利用停止、および詐取された前払式支払手段の利用停止と返金手続の態勢(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 5 前払式支払手段発行者関係)」Ⅰ-1-1⑵(払戻しを自由に認めるものは前払式支払手段に当たらない)・Ⅱ-2-5・Ⅱ-2-6・Ⅱ-3-4(払戻し。申出期間60日は最低限/「常に払戻しが可能である」と誤認させる説明をしていないか))/買取業者・転売サイトへの対策を求める意見と、それに対する回答(金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(前払式支払手段関係)」2023年5月26日・意見番号38/40/41)/金券類が古物営業法の対象に加わった経緯と件数(1995年4月11日 衆議院地方行政委員会・中田恒夫 警察庁生活安全局長)/ネットオークション規制と盗品の推計、盗品を買い受けた場合の民法上の返還(2002年11月8日 衆議院内閣委員会・瀬川勝久 警察庁生活安全局長)/電子ギフト券は物品ではないため古物に該当しない(2018年4月5日 参議院内閣委員会・山下史雄 警察庁生活安全局長2018年4月13日 衆議院内閣委員会)/カード会社のモニタリング(2016年12月1日 参議院経済産業委員会・小瀬達之 経済産業大臣官房審議官)/ショッピング枠の現金化の定義(2017年4月25日 衆議院財務金融委員会・遠藤俊英 金融庁監督局長)/前払式支払手段への本人確認義務(2022年5月13日 衆議院財務金融委員会・鈴木俊一 財務大臣)/遺品整理・実家じまいをめぐる質疑(2026年6月16日 衆議院消費者問題に関する特別委員会・井戸まさえ議員)※国会会議録はいずれも国立国会図書館「国会会議録検索システム」
裁判例の整理=前田竣 弁護士(片岡総合法律事務所)アカウント型ギフト券のアカウント停止と不当利得返還義務(消極)」CCR第9号・2020年3月、白石大 早稲田大学教授ECサイトのアカウント停止に伴う不法行為責任の成否(消極)」CCR第11号・2022年6月、「《概観》キャッシュレス取引裁判例の動向(第4期)」CCR第12号・2023年6月、「同(第6期)」CCR第14号・2026年6月(いずれも一般社団法人日本クレジット協会 クレジット研究所「キャッシュレス取引判例研究」)

※本記事は、公開されている記録を時系列に並べた資料であり、個別の事案について法的な判断を示すものではありません。国会答弁は法解釈を確定させるものではなく、裁判所の判断とは別のものです。判決についても、原典を確認できたものと、研究会の概観による要約にとどまるものがあります。学説には反対の見解もあります(アカウントへの登録に資格授与的効力を認めるべきとする立場など)。具体的なご相談は、弁護士等の専門家へお願いします。

よくある質問

Qギフトカードの売買を規制する法律はありますか?
Aギフトカードそのものの売買を正面から規制する法律は、現在のところ見当たりません。関係してくるのは古物営業法(物としての金券を扱う場合)、資金決済法(前払式支払手段の発行者に対するもの)、そして盗品などに関する刑法・民法です。ただし、物理カードとコードだけのものとで扱いが分かれる点が、この分野の特徴です。
Q電子ギフト券は古物営業法の対象ですか?
A警察庁の生活安全局長は2018年、国会で「電子ギフト券につきましては、物品ではないことから、古物営業法上の古物には該当しないところでございます」と答弁しています。ただし答弁は法解釈を確定させるものではありません。物理カード(金券類)は1995年の改正で対象に加えられており、そこは扱いが分かれます。
Q割引で売られているコードを買った人が裁判で争った例はありますか?
Aあります。アカウントの停止にともなって残高が使えなくなった利用者が、発行者に返還や損害賠償を求めた事案が平成30年以降くり返し起きています。研究者の整理では「ひとつの紛争類型を形成しつつある」とされ、公表されているものを数えると9件前後利用者側が勝った例は見当たりません
Qこの記事は法的なアドバイスですか?
A違います。公開されている国会会議録と、署名のある研究者・弁護士の論文で確認できた事実だけを並べた資料です。法解釈は確定していない部分がありますし、学説に反対の見解もあります。個別の判断は弁護士等の専門家にご相談ください。
Qなぜ買取サイトの比較をしているサイトが、こんな記事を書くのですか?
A売る前に何を知っておくべきかを調べていくと、結局のところ、この30年の積み重ねに行き着くからです。「なぜ本人確認があるのか」「なぜ規約で譲渡が禁じられているのか」、どれも理由が記録として残っています。それらを年ごとに並べたのが、このページです。