「闇バイト」でギフトカードを買わされる|「コードを送るだけ」は犯罪の実行役です
見覚えのない請求や勧誘が届いたときは、詐欺・注意喚起の記録で、 同じ手口がいま出回っていないか確かめられます。
「ギフトカードを買って、コードを送るだけ。1件10万円」、そんな募集を見かけたら、それはアルバイトではありません。
警察庁は、こうした募集を「犯罪実行者の募集」とはっきり書いています。「闇バイト」という言葉が広まりましたが、その中身は、切り捨てを前提にした実行役の調達です。
あわせて、ギフトカードの買取サイトを比較している立場から、「他人のコードを売ってくれ」と頼まれたときの話も書きます。
なぜ、ギフトカードが使われるのか
詐欺でだまし取ったお金は、そのままでは足がつきます。番号を伝えるだけで価値が動くギフトカードは、その足を消す手段として使われます。
2026年上半期の特殊詐欺で、被害金が電子マネーコード伝達型(ギフトカードなどの番号を伝えさせる形)で渡されたのは全体の5.5%でした。割合としては多くありませんが、件数としては増えています。詳しくは詐欺の最新ニュースにまとめています。
この5.5%を実際に動かしているのが、募集で集められた末端です。
募集の言い回しは、記録されている
警察庁は、検挙された事例から実際に使われた募集文言を集めています。そのまま引用します。
「犯罪ではありません」「詐欺ではありません」と書いてあること自体が、特徴として記録されています。ふつうの求人は、わざわざそう書きません。
募集広告の特徴も整理されています。
- 他の業務では考えられないような高額な報酬を提示しています
- 業務内容が不明確です
- 資格や経験を問いません
4つの段階で、抜けられなくなる
警察庁の資料は、応募から検挙までを4段階にまとめています。もっとも多いパターンです。
分かれ目になるのは、3つめの「個人情報を送らされる」段階です。身分証を送る前であれば、相手の手元には、あなたの情報がまだ1つも渡っていません。
資料に載っていない入口:「信頼している人の紹介」
上の4段階は「自分から応募した人」を前提にしています。実際には、応募しなくても始まります。
自分から応募していない人にとって、入口になるのは、信頼している人からの紹介です。
紹介から入った人は、甘い言葉に誘われたわけではありません。高額報酬の募集を、自分で探したわけでもありません。紹介してくれた人への義理を少し見せただけで、犯罪の実行役という位置に立たされます。
① 断れなくなるのは、2回目です(編集部取材)
実行後
1回目は、本当にただの頼みごとに見えます。断れなくなるのは2回目です。
1回引き受けた事実が、そのまま断れない理由に変わります。脅すために新しい材料を持ってくる必要はありません。あなたが渡した材料で足ります。
② 具体的には、こう誘われます(編集部取材)
時間もあるし、いいかな
断ろうとすると
順番に注目してください。誘うときは「留守番」「電話番」だけです。実際にやらされる「荷物の受け取り」が出てくるのは、「いいですよ」と言ったあとでした。
犯罪の言葉は、1つも出てきません。断る理由が見つからない形で頼まれ、中身は引き受けたあとに足されていきます。
※編集部取材。話し手や相手が特定されないよう、金額・時期・場所は書いていません。実際の言葉は、その都度変わります。
この誘い方の構造は、警察庁の資料にある4段階と同じです。一度でも動いたという事実が、断れなくする材料に変わります。警察庁の資料では、その材料は「個人情報」でした。「ちょっと手伝った」という事実そのものでも、同じことが起こります。
怖いと思ったら、その場で110番
いちばん悪い動き方は、自分で何とかしようとすることです。
弁償しようとする、相手と話し合って収めようとする、誰にも言わずに一回だけ済ませる、どれも、次の一回を呼びます。相手は、あなたが自力で解決しようとしている間だけ、優位に立てます。
報酬は、多くの場合支払われていません
警察庁の資料には、報酬をめぐる事例が載っています。
- 「受け子」で得た金を全額振り込ませられ、一円も手にできませんでした
- 「報酬は後でまとめて払う」と言われ、一度も支払われないまま逮捕されました
- キャリーケースを持って全国を転々とさせられ、逮捕されるまで家にも帰れませんでした
- 現金を持ち逃げしようとしたら、グループが警察に密告して逮捕されました
「危険を冒したのに報酬が支払われない」「密告されて逮捕される」、警察庁は、これを「使い捨て」という言葉で説明しています。
募集する側も、職業安定法に違反します
「闇バイト」の募集は、それ自体が法律に触れます。
「国民を詐欺から守るための総合対策」(令和6年6月18日・犯罪対策閣僚会議決定)には、犯罪の実行者を募集する情報の発信は、職業安定法第63条第2号に規定する違法行為に該当すると明記されています。
同じ文書は、こうした情報を次のように定義しています。
「闇バイト」、「裏バイト」等と表記したり、仕事の内容を明らかにせずに著しく高額な報酬の支払いを示唆したりして犯罪の実行者を募集する投稿
「仕事の内容が分からないのに、報酬だけが高い」という形が、定義に入っています。判断に迷ったときは、その募集文が定義に当てはまるかどうかを見てください。
なお、応募した側も検挙されます。警察庁は「たった一度でも手を染めれば最後には必ず警察に検挙される」と書いています。一度関わった人は、脅しによって、逮捕されるまで使われ続けます。
買取サイトを使う側として、知っておきたいこと
「自分のものではないコードを、あなたの名前で売ってきてほしい」、この頼まれ方をされたら、いったん止まってください。相手が知人や先輩であっても、その場で引き受けないでください。
・入手経路を「聞かないでほしい」と言われる
・売った代金を別の口座に送るよう指示される
・報酬として売却額の一部をもらう約束になっている
買取サイトは本人確認を行い、振込先は申込者本人の口座です。つまり、代わりに売っても、そのお金を頼んだ相手に渡す手段がありません(本人確認で用意するもの)。
あなたの名前で売れば、買取サイトの記録に残る名前は、あなたのものになります。
頼まれたときに何が起きるか、断り方まで含めて「代わりに売ってきて」と頼まれたらにまとめました。
家族や友人が応募していそうなとき
早いほど、選べる道が残ります。
警察庁の資料には、抜け出せた事例も載っています。
- 犯罪実行役の募集だと気づかず応募した大学生が、少年相談窓口に電話して保護されました
- 「闇バイト」に応募し移動中だった高校生が、警察署で声をかけられ思いとどまりました
- 母親が相談したことで、所在不明だった息子が発見・保護されました
検挙された人たちの多くが、取り調べで「家族や警察に相談すればよかった」と話しています。
闇バイトで奪われるもの、失うもの
お金がある人は、だまされると財産を失います。
お金がない人は、誘われるとあたりまえの生活を失います。
詐欺の被害者が失うのは、お金だけではありません。その方がこれから送るはずだった人生も、一緒に失われます。
加害者になった側も、自分の人生を失います。
まとめ
- 「ギフトカードを買ってコードを送るだけ」の募集は、アルバイトではなく犯罪実行者の募集です
- 募集文言には「犯罪ではありません」「ホワイト案件」「安全に稼げます」が使われていると、警察庁が記録しています
- 個人情報を送った時点で、断りにくくなる仕組みができます。身分証を送る前が分かれ目です
- 入口は募集広告とは限りません。信頼している人の紹介で、「あの人の紹介だから」と応じたところから始まります
- 怖いと思ったら、その場で110番。自分で何とかしようとすると、次の一回を呼びます
- 報酬は支払われないことが多いと記録されています。密告されて逮捕された事例もあります
- 募集する側は職業安定法違反にあたります。応募した側も検挙されます
- 他人のコードを、自分の名前で売る依頼は断ってください。記録に残るのは、売った人です
- 迷ったら #9110。少年なら少年相談窓口へ。早いほど選択肢が残ります
参考(出典)
- 犯罪実行者募集の実態・募集文言・4段階の流れ(警察庁「犯罪実行者募集の実態 ~少年を『使い捨て』にする『闇バイト』の現実~」)
- 「闇バイト」等情報の定義・職業安定法違反(警察庁「国民を詐欺から守るための総合対策」の決定について(通達) p.20〜21)
- 被害金の交付形態(警察庁 広報資料「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」 p.4)